深淵を科学する 第6回:3,739社を調べて、何の結果も残せませんでした

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結論から

2倍株・5倍株・10倍株の候補をスクリーニングで絞り込む。今回はこれ、実現できませんでした。

仮説はこうです。世に言う「テンバガーになりやすい財務条件」で候補を絞る。そこに中期経営計画の予実、つまり自分で掲げた目標をちゃんと達成できている会社かどうかを重ねる。有言実行の会社だけが残るわけだから、株価はさぞかしウハウハに違いない。

そう思ってデータを当たりました。惨敗です。

予実の達成ペースが良い企業群は、同じスクリーニングを通った企業からランダムに選んだ場合にすら負けました。ついでに、予実を外して財務条件だけに戻した版を測り直したら、そちらは日経225に届きませんでした。有言実行の会社を選んだつもりが、株価とは何の関係もなかった。今回の測り方では、ですが。

どうやって調べたか

まずデータがありません。中期経営計画の数値目標なんて、どこかに一覧で落ちているものではない。

なのでEDINETから有価証券報告書を全部引っ張ってくることにしました。3,739社の直近3期分。財務数値は決まった場所に入っているので機械的に抜けますが、中計の目標は文章の中に埋まっています。ここはAIに読ませて拾わせました。丸一日以上回しっぱなしで、API費用は30ドルほど。

集まったら達成ペースを計算します。目標に対して進捗が進んでいるか、遅れているか。そのうえで企業を、ペースが良いグループとそうでないグループに分け、その後1年の株価を比べました。同じスクリーニングを通った企業からランダムに選んだ場合と、日経225を買った場合も並べて測っています。

で、ここが引っかかった

今回試した期間は短く、データも足りていません。これで言い切るにはまだ早い。

ただ、調べている途中でずっと気になっていたことがあります。

証券会社のスクリーナーに「ROE15%以上、増収率10%以上、自己資本比率50%以上」みたいな条件を入れると、何十社か出てきますよね。あれを見て、そのまま買っていいのか。

条件の出どころをたどると、だいたい「10倍になった銘柄を後から調べたら、どこもこういう傾向がありました」という話に行き着きます。よく考えるとこれ、10倍になった会社の側しか数えていません。同じ条件を満たしていたのに、10倍どころか横ばいだった会社が何社あったのか。そっちを数えた資料を探したんですが、これが出てこない。私の探し方が悪いだけかもしれませんが、少なくとも個人が普通に検索して届く範囲には見当たりませんでした。

条件を満たしたから10倍になった、という話ではないんですよね。10倍になった会社を後から調べたら条件を満たしていた、という話で。順番が逆なので、そのまま逆向きには使えない。使えないはずなんですが、スクリーナーに入れる条件はだいたいここから来ています。

うちの検証がスクリーニング内のランダム抽出に負けたのも、たぶん同じ話です。条件で絞った集団の中では、もう差がついていない。

中の人の一言

今回、欲の皮突っ張って数枚の千円札をどぶに捨ててしまった訳ですが
いい勉強代になりました。
確かに実際「5倍10倍になった株を調べると各社この傾向があったよ」
というのがスクリーニング条件なんだけど逆引けないってのは目から鱗
調べれば調べる程面白いですね。
調べている間にもNASDAQが結果出してくれるし知見も深まる
次はどうしましょうかね

一応、やったこと

  • 50社のサンプルで、有報から財務データと中計の数値目標が本当に取れるか先に測定(取得率9割超で通過)
  • EDINETを全期間クロールし、3,739社×直近3期の有報を収集
  • 中計の数値目標をAIで抽出。数値目標ありが約8割。処理30時間、費用30ドル弱
  • 目標値の単位不統一(億円/百万円/円、ROEの比率とパーセント)を発見して修正
  • 達成ペース(進捗率÷時間経過率)を売上高・営業利益・ROEで算出
  • 財務条件で2倍株候補1,064社・5倍株候補85社・10倍株候補21社を選定。10倍株層は達成ペースを計算できる会社がほぼ皆無で、この時点で軸として成立しないことが判明
  • J-Quantsで株価を追加取得し、1年フォワードリターンでバックテスト
  • 達成ペースを外し、財務条件のみでも再検証。日経225に届かず