「大量廃棄時代がやってくる」って、本当ですか?

Pocket

「大量廃棄時代がやってくる」って、本当ですか?

発電道楽チャンネルで、ソーラーパネルの「大量廃棄時代説」を歌にしました。FIT(固定価格買取制度)の期間が終わった太陽光発電所は、パネルが山ほど不法投棄されて社会問題になる——というアレです。

今回は、実際にこの説を報じているメディア記事を横断的に確認し、そこで挙げられている懸念点を一つずつ検証しました。すべての論点について「メディアの主張→その根拠→私たちが調べた結果→結論→メディアの見立て」という同じ順番で並べます。

7つの懸念

  1. 不法投棄・放置とその危険性
  2. 有害物質による環境汚染
  3. 最終処分場の残余容量逼迫
  4. 廃棄・リサイクル費用の積立不足
  5. 処理能力を超える廃棄量(「現在の100倍」)
  6. リユース・リサイクルの普及未成熟
  7. 複合素材の分離技術の難しさ

①不法投棄・放置とその危険性

この論点は、実は2つの主張がセットで語られています。分けて見ていきます。

主張A:FIT終了後、事業者がパネルを放置し、不法投棄が横行する。根拠:太陽光関連事業者の倒産事例(かぶちゃんメガソーラー社の破産など)が存在する。

主張B:放置されたパネルは、破損・浸水時にも発電し続けるため危険だ。根拠:経産省が「太陽光パネルは、災害等によって浸水・破損した場合でも発電を行う可能性があるため、破損箇所等に触れると感電する危険性があります」と注意喚起している。

主張Aの反証:倒産した会社の資産は、破産管財人が価値のあるものから換価し債権者への弁済に充てるのが原則です。稼働中の太陽光発電所は継続的な売電収入を生む「有価物」そのものであり、中古発電所の売買市場も確立しています。「倒産=パネル放置」というシナリオは、経済合理性の面でも制度設計の面でも起こりにくいと考えられます。放置される前に、競売・譲渡で次の担い手に渡ると見るのが自然です。

公開情報も確認しました。環境省の産業廃棄物不法投棄統計(令和4年度)では、新たに判明した不法投棄134件のうち約8割(101件)が建設系廃棄物で、太陽光パネル由来は主要カテゴリとして計上されていません。「倒産した事業者のパネルが実際に放置・不法投棄された」という具体的な追跡事例も確認できませんでした。

結論:大規模に発生している事実は確認できないだけでなく、そもそも制度・経済合理性の両面から起こりにくい構造になっています。問題である可能性は低いと考えます。

主張Bの反証:太陽光パネルの接続部(MC4コネクタ規格)はIP67(完全防水)・絶縁カバー付きの構造で、通常の使用状態では人が導体部分に直接触れることはできません。経産省が想定している感電シナリオは、「端子部が破損している」かつ「水に濡れている」という、通常運用では同時に起こりえない異常事態が重なった場合の話です。

結論:感電注意喚起そのものは正しい情報ですが、極めて限定的な異常時の話であり、日常的なリスクとして語るのは誇張です。

メディアの見立て:主張Aと主張Bは本来別々の話ですが、両方をセットで語ることで「放置される→危険な状態が野放しになる」という物語を、実態以上に深刻に見せていると思われます。

②有害物質による環境汚染

メディアの主張:太陽光パネルには鉛・ヒ素・カドミウム等の有害物質が含まれ、埋め立て時に環境汚染を引き起こす。

調べた結果:詳しい含有量の計算と身近な製品との比較は第1弾の記事で徹底的にやりました。鉛・ヒ素・アンチモン・カドミウムは太陽光パネル特有の物質ではなく、身の回りの電子機器にも普通に含まれています。

結論:規制の枠組みで見ても、太陽光パネルは野放しの危険物ではありません。問題ではないと考えます。

③最終処分場は、本当に逼迫するのか

メディアのシナリオ想定:2030年代後半、処理能力(約13万トン/年)を大きく上回る廃棄物が一気に押し寄せ、最終処分場が逼迫する。

その根拠:環境省シナリオ(50万〜80万トン)の、それも**最大値**を取っています。

私たちの想定:基準にすべきはNEDOのシナリオ(17万〜28万トン)です。環境省の80万トンは、複数ある公的推計の中の最大値にすぎません。しかも両方の推計に共通する弱点として、「寿命が来たら延命せず一律に排出される」という前提を置いており、卒FIT後も運転を続けるという経済合理性の高い選択肢を計算に入れていません。この点を加味すれば、NEDOの数字はさらに下振れする可能性が高いと見ています。

そのうち最終処分(埋立)に回る割合について、公式な将来推計は環境省・NEDOともに存在しません。民間サイト「PVリサイクル.com」が環境省調査を基に算出した試算では、現在排出中のパネルの約10%が最終処分に回っているとされています。これをNEDOシナリオに当てはめると、最終処分に回る量は年間1.7万〜2.8万トン程度というオーダーになります。

結論:ここは2つの数字を分けて考える必要があります。リサイクル専用施設の総処理能力(13万トン/年)と、排出総量(NEDOシナリオ17万〜28万トン)を比べると、確かに能力の方がやや不足しています。ただし、そのうち実際に埋立処分(最終処分)に回る量は1.7万〜2.8万トン程度と見られ、こちらは処理能力を十分下回る水準です。つまり「処理能力全体がまったく足りない」という総量ベースの懸念は正当ですが、「最終処分場が逼迫する」という埋立ベースの懸念は、複数ある推計の中から最も厳しい数字を選んだ上に成り立つ、やや誇張された論調だと考えます。

メディアの見立て:環境省とNEDOという公的機関同士の推計でさえ、50万〜80万トンと17万〜28万トンで4〜5倍の開きがあります。この中から一番大きい環境省の80万トン側だけが記事の見出しに使われるのは、事情をよく知らない担当者が、公開資料の中から一番大きい数字を拾ってシナリオを立ててしまったからではないか、というのがこちらの見立てです。

④廃棄費用の積立不足

メディアの主張:太陽光事業者の多くは廃棄費用を積み立てておらず、資金不足のまま卒FITを迎える。

根拠:「積立を実施している事業者は2割以下」という調査結果。

調べた結果:この数字は2022年7月の義務化**以前**の任意積立時代の統計です。現在はFIT/FIP認定10kW以上のほぼすべての設備で、売電収入からの源泉徴収的な外部積立が義務化されており、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が発電所IDごとに一元管理しています。40円/kWh・50kWの案件なら、10年間で約85万円が自動的に積み立てられる計算になります。

結論:制度上はすでに解決済みの問題です。問題ではないと考えます。

メディアの見立て:制度変更前の古いデータを、更新しないまま使い続けている可能性が高いと思われます。

⑤「現在の100倍」は、盛った数字なのか

メディアの主張:2030年代の廃棄量は、現在の100倍以上になる。

根拠:将来のピーク予測(17万〜80万トン)と、2015年の全国排出実績(住宅用677トン+非住宅用1,674トン=約2,351トン)という普及黎明期の数値の比較。

調べた結果:数字自体は成立します。比較すると72倍〜340倍という計算になり、「100倍」という表現に根拠がないわけではありません。ただし、③で見た通り複数ある推計の中の最大値を選び、しかも比較対象に母数が極端に小さい黎明期の数字を選ぶことで、倍率を最大化しています。数字が盛られていないことと、その見せ方が煽動的でないことは、別問題です。

結論:数字の正確性は否定しませんが、倍率を最大化するための恣意的な数字の組み合わせ方には賛同できません。

メディアの見立て:③と同じ手口です。複数ある選択肢の中から、最も見出しが立つ組み合わせを選んで倍率を作っていると思われます。

⑥リユース・リサイクルは、本当に未成熟なのか

メディアの主張:太陽光パネルはリユース・リサイクルの仕組みが整っておらず、廃棄物処理の受け皿がない。

根拠:業界団体自身が「トレーサビリティ未整備」「海外流出」の実態を認めている。

調べた結果:「トレーサビリティ未整備」という前提には、アップデートが必要です。廃棄費用の外部積立制度は、発電所IDごとにOCCTOが一元管理しており、少なくとも資金面では、どの発電所がいくら積み立てているかを追跡できる体制がすでに確立しています。「業界の実態がブラックボックスだから危険」という前提そのものが古くなっています。

ただし正確には、これは資金管理の体制であり、撤去後の”パネルそのもの”がどこに流れたかを追跡する仕組みとは別物です。業界団体が課題としているのは後者(物としてのトレーサビリティ)であり、ここは区別して認めます。

「海外流出」そのものを問題視する論調にも違和感があります。海外で中古パネルとして再利用されているなら、それはリユースが機能している証拠であり、批判材料にはなりません。問題があるとすれば、適切な検査を経ずに有害廃棄物として輸出されるケースであり、輸出という行為自体ではありません。

結論:物流面のトレーサビリティ課題は事実として残りますが、「未整備だから危険」と一括りにするのは正確ではなく、「海外流出=問題」という前提も論点のすり替えです。

メディアの見立て:資金面の制度整備が進んだことを反映せず、業界団体の古い課題認識をそのまま引用し続けている可能性が高いと思われます。

⑦複合素材の分離技術は、本当に「詰んでいる」のか

メディアの主張:ガラス・EVA樹脂・バックシートを分離する技術が確立されておらず、リサイクルできない。

根拠:業界資料でも分離技術の難しさが指摘されている。

調べた結果:自動車のフロントガラス(合わせガラス)も、太陽光パネルとまったく同じ「ガラス+樹脂中間膜」構造で、同様に分離技術が確立していません。年間300〜500万台の廃車が出ていますが、これで特集が組まれることはありません。

結論:「発展途上」であるのは事実ですが、太陽光だけの問題ではなく、複合素材製品全般が抱える産業全体の課題です。

メディアの見立て:自動車や他の複合素材製品には触れず、太陽光だけを名指しして「詰んでいる」かのように描いている可能性が高いと思われます。

そして、制度は動き出している

2026年5月29日、「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」が成立し、6月5日に公布されました。多量排出事業者への事前届出義務、認定リサイクル事業者への処理業許可の特例、施設整備への財政支援などが盛り込まれています。「まだ何も決まっていない」ではなく、「制度が動き出した」段階に来ています。

なぜ、いつも「一番大きい数字」が選ばれるのか

論点 公開情報にある全体像 報道で採用される部分
感電リスク 通常設計では端子は防水・絶縁済みで感電しない 端子破損+浸水という異常事態を前提に危険性を強調
廃棄量の推計 NEDO:17万〜28万トン/環境省:50万〜80万トン より大きい50万〜80万トン側
積立制度 2022年義務化後は自動天引き・OCCTO一元管理 2022年以前の「積立2割以下」という古い数字
リユース・リサイクル率 環境省資料では「約77%リユース」という数字も存在 「リサイクルが未成熟」という課題面だけ
卒FIT後の選択肢 「事業継続」「発電所売却」という経済合理的な選択肢も存在 「廃棄」だけが唯一の結末であるかのように

これだけ毎回「不利な情報だけが抜け落ちる」のが続くと、さすがに偶然とは思えません。もっとも、悪意があると決めつけるのも大人げないので、ここは「現場を知らない担当者が、審議会資料の一番大きい数字だけ見て記事にしてしまった」という、寛大な解釈をしておきましょう(笑)。だとすれば、次からは資料をもう少し最後まで読んでいただければと思います。

最も厳しい条件でも、黒字は残る

前提:そもそも、なぜ事業者は放置せず運転を続けるのか。最も厳しい条件を重ねて試算しました。卒FIT後の買取単価は旧一電・新電力の中央値9.62円/kWh、発電側課金は発電量ベースで課金、さらに50kW・FIT40円のケースで利益率30%になるよう逆算した設備修繕積立(1kWあたり年間4,290円、容量に比例配分)を上乗せ、その上で出力制御による売上20%減を重ねています。すべて税引き前です。

ケース FIT単価/容量 卒FIT後の年間売上
(出力制御▲20%後)
経費合計
(O&M+PCS+課金+積立)
利益 利益率
低圧① 40円/50kW 53.9万円 47.1万円 6.7万円 13%
低圧② 24円/75kW 77.9万円 60.4万円 17.5万円 22%
低圧③ 14円/100kW 92.4万円 72.7万円 19.7万円 21%
高圧① 40円/14円・600kW
(過積載120%)
623.4万円 436.1万円 187.3万円 30%
高圧② 40円/14円・1200kW
(過積載120%)
1,246.8万円 817.2万円 429.5万円 35%

考察:FIT単価が高い世代(40円)ほど、卒FIT後の売上とのギャップが大きく、パネル容量が小さいほど固定費に経費負けしやすい状況が確認できます。それでも、最も不利なはずのFIT40円・50kWパネルでも収益が出せるため、事業者の逃亡は考えにくいという経済的合理性が成り立ちます。また、問題視されがちなメガソーラーも、スケールするほど利益率が高くなるという結果が出ており、大規模設備ほど放置されるという懸念には疑問の声を呈さざるを得ません。

結論:結局、何が問題なんだ?

事業者が放置・廃業するという社会問題は、来ません。規模を問わず、卒FIT後も運転を続けた方が確実に儲かるからです。最も厳しい条件を重ねても黒字が残り、規模が大きいほど利益率も上がる——このシミュレーションが示す通り、①(不法投棄・放置)と④(積立不足)で確認した経済合理性・制度対応は、数字の面からも裏付けられています。

一方で、将来の廃棄物を処理しきる体制の整備という課題は、正直に言えば残っています。処理能力の不足(③)、リユースの物流トレーサビリティ(⑥)、複合素材の分離技術(⑦)は、太陽光特有の欠陥ではなく産業全体が向き合うべき宿題として、引き続き注視すべきです。③⑤で見た通り、メディアが使う数字の多くは複数ある推計の中の最大値・最大倍率であり、実態以上に煽られている面はありますが、課題そのものが消えるわけではありません。

「大量廃棄時代」という、事業者が一斉に責任を放棄するような物語は来ません。ただし、廃棄物処理体制の整備は、来る未来として引き続き備えるべきだと考えます。


【別章】どうしても言っておきたいこと

宮古島の「70億円ドブ捨て」というデマについて

SNSで、宮古島のメガソーラー実証設備が「税金70億円を投入して4年で終了、パネルは重ねられ放置」と拡散されています。事実確認すると、かなり文脈がねじ曲げられていました。

  • 70億円は宮古島単独ではなく、4離島(多良間島・与那国島・北大東島・宮古島)合計。宮古島単独は61.5億円
  • 全額税金ではなく、国庫補助は3分の2、残り3分の1は沖縄電力の自己負担
  • 実証運転は2010年10月〜2014年3月という当初から決まっていた計画期間で、失敗して打ち切られたのではなく、4項目すべての検証で成果を確認して計画通り完了
  • 「パネルが重ねられ放置」の実態は、2019年の台風被害を受けて、安全確保のためにパネルを一時的に取り外したという経緯(沖縄電力公式発表)

「実証実験が用済みになって放置された」という物語と、「計画通り成果を出した5年後に、台風で壊れたから安全のため撤去した」という実態は、まったく別物です。ただし正直に言うと、撤去から現在まで7年間パネルが再設置されていない理由は、公式には見当たりません。ここは推測ですが、補助金で取得した設備は法定耐用年数(太陽光パネルは17年)の間、処分に経産省の承認と補助金返還手続きが必要になる「財産処分制限」というルールがあり、これが動きを鈍らせている可能性はあると考えています。あくまで推測です。

熊本の「パネル大規模崩壊・800万枚放置」情報について

同様に、熊本県内でパネルが崩壊し800万枚の放置対策が検討中、という情報も見かけました。これは特定の個人によるX(旧Twitter)の投稿を、AIが自動要約した記事のみが出典で、県や環境省の公式発表、大手メディアの裏取り報道では確認できませんでした。これを事実として扱うのは、今回批判している「未検証情報の拡散」とまったく同じ構造に陥ります。だから、事実としては書きません。

ただ、この発信者については一言申し上げておきます。奈良市議を務める、いわゆる「へずまりゅう」氏です。彼は迷惑系YouTuber時代に窃盗罪等で有罪判決を受けた経歴を持ち、現在の「鹿パトロール活動」でも、本人が虐待の証拠だと主張する動画の大半は、第三者の報道機関の確認では「虐待とされる場面は確認できない」とされています。市議就任後も、市長への暴言で議長から注意を受け、後に自ら「どう喝だった」と認めて謝罪する、同僚議員から「議案読んでない」と指摘されるといったことが繰り返し報じられています。

迷惑系としての活動そのものは個人の自由です。しかし公職にある人間が、裏付けの取れない情報を大きな影響力で拡散し続けることについては、有権者として、そして情報の受け手として、問われてよいはずです。


参考にした一次情報