2023年5月現在の九州電力出力制御の推移を復習してみた

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今話題となっている出力制御について現在九州で何が起こっているのかデータを元に確認してみます。

なおデータについては、以前ご協力頂いた九州管区の太陽光発電所を所有される事業者さんから監視装置(エコめがね)のデータを2年分頂き、以前いただいていたデータと合わせて3年度分の出力制御率を計算しました。

すべで監視装置のデータを元に展開しますので、九州電力の発表する制御率や予測値と一致しないことがあります。

太陽光発電の1現場でのデータですので再エネ全体で語る場合よりも数値が上で計算されている可能性はあります。(というか風力などと均してないのでそうなります)

集計結果

 月  2020年  2021年  2022年  2023年
 4月 2.45% 32.00% 8.24% 51.69%
 5月 2.00% 16.50% 1.5%
 6月 2.21% 4.4% 0.0%
 7月 0.0% 0.0% 0.0%
 8月 0.0% 0.0% 0.0%
 9月 0.0% 0.0% 5.28%
 10月 0.0% 0.0% 0.54%
 11月 0.0% 0.0% 2.15%
 12月 0.0% 0.0% 0.68%
 1月 0.0% 0.0% 6.53%
 2月 0.0% 0.0% 9.45%
 3月 0.98% 0.0% 40.66%
 合計 0.71% 4.78% 6.57%

月単位の出力制御量をグラフ化するとこのようになります。

全体的に見ると、3月から6月あたりに出力制御が集中している傾向が分かり2022年度からは

秋にも出力制御が集中し始めているのが分かります。

月ごとのデータをみると制御方法を一律制御に変更した2021年4月と同様(といいうかそれ以上)の急激な変化が見てて取れます。

今回のルール変更(代理制御)が入ってから出力制御が本格化する2022年3月頃からの出力制御量は今までにないものがあります。

こういうのは特異点というか、異常なデータと言っても過言ではない感じがします

出力制御量を年度で累積したものをグラフ化するとこのようになります。

どうやら年度での特徴というかデータ自体規則性は今一歩不明ですが、隔年で春の抑制がグッと上がっている感じと言えばいいのでしょうか。

制御方法を一律制御に変更した2021年4月と同じ(といいうかそれ以上)の急激な変化が見てて取れます。

年間通して言える事

出力制御について年度毎に均して見てやると

「月単位で言えば制御量がかなり上下しますが、年度を通して考えると年々徐々に制御量が増えてきており直近は5%前後となっている。」

と言えそうですね。

今年度に関して言えば初月の4月だけでひと月の51.69%制御されており、去年の年度発電量を使って計算すると既に年度での出力制御率が6.22%となっています。

このまま推移すると一体どうなってしまうのかそら恐ろしい気がします。

ただし九州で最近大きく電力の需給事情が急激な変化を見せたという話は聞かないですから

出力制御について単年度で大きく変化があるのは考えにくいですね。

ここ5年程の推移の延長線上の制御率で収まるのではないかなと、個人的には予想しています。

短期的に言える事

直近の4月、3月に関して言えば制御率が51.69%、40.66%となっており非常事態です。

本来太陽光の稼ぎ時である4月から9月の年度の上半期において売り上げが半減するという事は経営的には負担が大きいような気がします

変動が大きかった前回2021年4月5月は32.0%、16.5%と制御率は減少していき7月以降は0%制御で年度を終えています。果たして今回はどのような推移を辿るのでしょうか?

代理制御の目的

今回の制御の変動は2022年12月からルール追加された「代理制御」に起因すると思われます。

そもそも代理制御とはいったい何でしょうか?

詳しい話・厳密な話は電力会社さんのHPをご覧いただくとして

「代理制御とは、2022年までは出力制御される発電所とされない発電所があったから

 出力制御される発電所の対象を増やして、各自の負担を減らすようにするよ!!」

というのがそもそもの趣旨でございます。

そのために

「出力制御されない発電所はパワーコンディショナーが遠隔出力制御対応されていないから出力制御対応しているパワーコンディショナーを設置してある発電所が一旦出力制御を肩代わりして、あとから精算するね」

という仕組みとなっております。

精算は2か月後の検針タイミングということになっており、制御の急変動があった3月の代理制御分は5月の検針分(5月下旬ごろ)精算される予定になっています。

見えてきた課題

発電事業者さん毎に表現色々ですし、SNSは「僕ちんパーフェクトな殿上人設定」みたいな違う世界線の方が大勢おられるのですが

おそらく大半の事業者さんはこう思われたんじゃないでしょうか?

「代理制御は知ってたけど、こんなに急変動するなんて想定してなかった」

「去年と全然ちげーじゃねーかよ!」

今回SNSで騒ぎになっている背景にはこんなことがあるのではないでしょうか?

代理制御される側

・代理制御で肩代わりした分の制御は2か月間精算されない、

その額が多分高額

代理制御してもらう側

・忘れた頃に突然(高額の)精算が来る

今年の例でいくと

「出力制御ピーク時に代理制御については最大1か月分程度の一時的な売上減が発生するため

 それを補う分のキャッシュをあらかじめ準備しておく」

ぐらいしか有効な対策がないような気がしますね。出力制御のピークの波と合わせて

来年の同じ時期には同じような波がまた訪れることでしょう。

今まで非常に順調な売上推移だったと思いますし、利益をあまり留保せず再投資を行ってこられた方も多いと思いますが、今後は出力制御時期に一時的なキャッシュアウトが発生することが予想されますのでご注意を

最後に一言

現場の発電事業者様におかれましては、かなりの売上変動が発生して経営的に危機感や一部不信感が募る場面もあろうかと思います。

それは角度を変えると、より多くの再エネを系統に参加できるように果敢なチャレンジをされている各エリア送配電の方々の努力の陰なのではないでしょうか。

日々系統の安定に尽力されている各エリア送配電の方々に感謝と敬意を表します。

データをご提供頂いた発電事業者様大変有益な情報ありがとうございました。

【参考】制御率の計算方法について

このような方法で計算をしています。

元データは公開しませんが、発電事業者さんはお手元の監視装置の履歴データで参照・検算できると思います。

1)制御電力量を計算します

頂いた監視装置のデータは1時間毎の発電量と制御時間(分)と制御率(%)が分かります

そのデータから定格出力が制御された時間が計算できます。

制御時間(分)×制御率(%)÷60÷100=定格制御された時間

ここに低圧発電所のPCS出力49.5を掛ける事により制御電力量を計算します。

※抑制がかかるのはピークカットしているであろうという想定での計算です。

2)制御率を計算します。

制御電力量÷(実発電電力量+制御電力量)=制御率(%)