本稿は、経産省・系統ワーキンググループが公表した「優先給電ルール見直し後の出力制御シミュレーション」を出発点に、一次資料への遡り、FIP認定実績との突き合わせ、大規模太陽光の新規接続動向などを踏まえて検証した記録である。文中、【事実】は一次資料(官公庁・業界団体の公表資料)で確認できた内容、【推測】は筆者(および対話を通じて整理した独自試算)による見立てであることを明示する。
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1. 今回の疑問
きっかけは、経産省・系統ワーキンググループが公表しているある表だった。優先給電ルールの「順番変更前」と「順番変更後(FIP比率25%の場合)」で、エリアごとの太陽光・風力の出力制御率を比較した表で、たとえば東北エリアの太陽光は52%→65%、北海道は30%→40%と、FIT電源の出力制御率が大きく増加するという試算になっていた。

ここから浮かんだ疑問は次の2点。
- 来年度から始まる優先給電ルールの変更(FIT電源→FIP電源の順に出力制御する仕組み)により、東北や中四国などでFIT太陽光の抑制が本当に10%程度増えるのか。前提条件は妥当なのか。
- この試算が仮定する「FIP比率25%」というのは、実態としてどれくらいの水準なのか。仮に1割程度の抑制増加が起きるなら、FIT:FIPの容量比はどの程度必要なのか。
この疑問を出発点に、一次資料の追跡と実績データの検証を重ねた結果、当初のイメージとはかなり違う結論にたどり着いた。
2. 結論(先出し)
- 【事実】経産省の試算表は、2033年度時点・太陽光風力導入量1.3倍・需要1.1倍・FIP比率25%という、複数の楽観(悲観)シナリオを重ねた仮想到達点のスナップショットであり、「来年度からこうなる」という予測ではない。
- 【事実】FIP太陽光の実績は2024年3月末時点でわずか0.8%(0.6GW)、2025年時点でも業界団体(JPEA)自身が「電源の1%程度」と認めており、2030年に25%へ到達するトレンドには乗っていない。
- 【推測】したがって、経産省試算表の数値どおりにFIT太陽光の出力制御が急増する可能性は低い。
- 【事実】他方で、大規模地上設置太陽光の新規接続は、環境アセス強化・森林法罰則強化・FIT/FIP支援の2027年度以降廃止方針などにより明確に鈍化している(2,000kW以上区分の認定量は2020年度の2,271MWから2024年度は1,023MWへ半減)。
- 【推測】一方で、住宅用太陽光(10kW未満・出力制御対象外)、事業用屋根置き太陽光(支援継続)、非FIT低圧太陽光(年3.5〜5GW増)、洋上風力(東北中心に別ルートで拡大)、原発再稼働という「制御されにくい供給源」は増え続ける見込みで、そのしわ寄せは既存の大規模地上設置FIT案件に集中しやすい。
- 【推測】結果として、”表の数値通りにはならないが、出力制御そのものが増えないわけではない”というのが最も精度の高い着地点。要注意エリアは北海道・東北・中国・四国・九州(+北陸は風力面)、東京・中部・関西も油断は禁物。
3. 全エリア 出力制御フォーキャスト(独自試算)
【推測】以下は、経産省の簡易式(見直し後FIT出力制御率=t×1÷(1−a)、t:現行のFIT/FIP区別なし出力制御率、a:FIP比率)に、実績トレンドから外挿したFIP比率シナリオ(低位・中位・高位)とベース制御率の伸びを組み合わせた独自試算である。
北海道・東北・中国・四国・九州は詳細な3シナリオ分析、北陸・東京・中部・関西は簡易的な定性推測にとどまる。

3-1. FIP比率シナリオ(全国・太陽光、容量ベース)【推測】
| 2027年度 | 2030年度 | 2040年度 | |
|---|---|---|---|
| 低位(現状トレンド継続) | 1.5〜2% | 3〜5% | 8〜12% |
| 中位(ルール変更で転換加速) | 3〜6% | 10〜15% | 20〜30% |
| 高位(JPEA公式目標達成) | 6〜10% | 25%前後 | 30〜40% |
起点:2024年3月末 0.8%(0.6GW)【事実】。2025年時点の実績「1%程度」【事実:JPEA】を踏まえ、低位〜高位に幅を持たせた。
3-2. エリア別 FIT太陽光 出力制御率(中位シナリオ)【推測】
| エリア | 2027年度 | 2030年度 | 2040年度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 3〜6% | 10〜17% | 24〜32% | 詳細分析 |
| 東北 | 5〜10% | 20〜31% | 43〜55%(要警鐘) | 詳細分析/洋上風力の新規パイプラインが突出 |
| 北陸 | 低(太陽光影響小) | 低 | 低〜中 | 簡易推測/太陽光は軽微、風力(洋上)は要警戒 |
| 関西 | 低 | 低〜中 | 中(原発再稼働で緩やか上昇) | 簡易推測 |
| 中国 | 4〜6% | 7〜11% | 13〜20% | 詳細分析 |
| 四国 | 3〜5% | 6〜10% | 10〜17% | 詳細分析/需給逼迫度(対最低需要160%)は九州に次ぐ高水準で上振れ注意 |
| 九州 | 8〜13% | 17〜24% | 28〜40% | 詳細分析/既にベース水準が高い |
| 東京 | 極小 | 極小〜低 | 低 | 簡易推測 |
| 中部 | 極小 | 極小〜低 | 低 | 簡易推測 |
4. エリア別の見立て(要点)
北海道・東北・九州
【推測】いずれも詳細分析の対象。特に東北は、太陽光・風力とも2033年度供給計画上の新規接続量が他エリアと桁違いに大きく(太陽光+960万kW、風力+530万kWの計画)、【事実】変動再エネ導入量が最小需要の143%(2022年度)に達している。
【推測】この物理的な供給過多構造が主因であり、FIT/FIP転換の影響より容量そのものの伸びが支配的である。
四国
【事実】JEPXエリアプライスの全日平均は直近(2025年10月)で全国最安値(9.28円/kWh)。【事実】変動再エネ/最低需要比率は160%(2022年度)で九州(169%)に次ぐ高水準。【推測】経産省試算上のポイント増加幅は他エリアより小さく見えるが、この需給逼迫構造を踏まえると軽視できないエリアである。
中国
【推測】四国・九州ほどの逼迫度ではないが、直近の年間出力制御率の伸び(2022年度0.5%→2023年度3.6%)は急激で、継続的な監視が必要。
北陸
【事実】太陽光単体では需給逼迫度は全国最低クラス(63%、2022年度)。
【事実】他方、風力は既存18万kWに対し2033年度時点で+229万kWという突出した増加計画がある。
【推測】太陽光中心の事業者はリスクが低いが、風力(特に洋上)案件には要警戒。
東京・中部・関西
【事実】現状の出力制御率はごく低水準。
【推測】ただし原発再稼働の進展や非FIT低圧太陽光の積み上がりにより、緩やかな上昇圧力がかかる可能性はあり、楽観視は禁物。
5. 大規模太陽光の新規接続はなぜ鈍化しているのか
【事実】2,000kW以上区分の太陽光認定量は、2020年度の2,271MW(129件)をピークに、2024年度は1,023MW(41件)まで減少している。背景には以下が確認できる。
- 【事実】2025年12月、大規模太陽光発電事業に関する対策パッケージが閣議決定され、環境影響評価の対象拡大、森林法の罰則強化、電気事業法上の構造安全性確認制度の創設、景観法の運用強化などが盛り込まれた。
- 【事実】2027年度以降、事業用太陽光(地上設置)はFIT/FIP制度の新規認定対象外とすることが調達価格等算定委員会で了承されている(2026年度落札案件を除く)。
- 【推測】これにより、今後リスクが集中するのは主に「2026年度以前に認定を受けた既存の大規模地上設置FIT案件」である。
【推測】一方で、住宅用太陽光(出力制御対象外)、事業用屋根置き太陽光(支援継続)、非FIT低圧太陽光(年間3.5〜5GW規模で増加中【事実】)、洋上風力(東北中心に別ルートで進行中)、原子力の再稼働という「制御されにくい供給源」は増加を続ける見通しであり、その分の需給調整負担が既存の大規模FIT案件に集中しやすい構造になっている。
6. まとめ
経産省の試算表を鵜呑みにすれば「来年から一気にFIT太陽光の抑制が増える」ように見えるが、実際にはその前提(FIP比率25%、2033年供給計画1.3倍)は現実の進捗から大きく乖離している。
【推測】他方で、「制度変更の影響は限定的=出力制御は増えない」と結論づけるのも早計で、大規模太陽光以外の供給源(住宅用・屋根置き・非FIT低圧・洋上風力・原発)が増え続ける限り、既存の大規模FIT案件へのしわ寄せという形で出力制御圧力そのものは今後も続くとみられる。
エリア別には北海道・東北・中国・四国・九州(+北陸は風力面)を中心に、東京・中部・関西も含めて中長期の監視を続けたい。
付録:検証ログ(要約)
以下、筆者の問いは原文のニュアンスを変えずに不穏当・不適切な表記のみ整えたもの。回答は要約(重要論点には補足を付記)。
Q1. 出発点の疑問
出力制御予測をしたい。この情報ソースは経産省のものですが、来年4月から開始される優先給電ルールの変更により、東北や中四国など太陽光(FIT)は10%程度抑制が増えるのではないか? という予測。
1. 可能であれば原典の資料を調査し、シミュレーションの前提条件が適切なのか検証したい。
2. 現行のFIT/FIPの割合で制度移行した場合に、10%のインパクトがあるほどエリア内FIPの出力総数/全ソーラーの出力総数の割合は大きいのか? 1割増ということはFIT:FIPが9:1でFIPが抑制免除になるぐらいの割合ですよね。
回答要約:提示された表は第52回・第53回系統WG資料(2024年9月・12月)が原典であり、「FIP比率25%」は2033年度時点を想定した仮想シナリオであることを一次資料で確認。経産省の簡易式(見直し後FIT制御率=t÷(1−a))を用いると、10ポイント前後の増加を再現するにはFIP比率が25%程度必要で、FIT:FIP=9:1(10%)では不足(相対増加は約11%にとどまる)と判明。【補足】当時把握していた2024年3月末の太陽光FIP実績(0.8%)は、この25%という前提から大きく乖離していることも合わせて指摘した。
Q2. FIP実績データの更新とJPEA目標の実現性
1. FIP認定量の資料が2024年のものしかなく古い。より新しい情報を探してほしい。
2. JPEAの2030年25%目標は本当に実現性があるのか。現時点の進捗は目標達成ペースにあるのか。経産省の目標は政治家向けの「絵に描いた餅」ではないか。その前提で組んだシミュレーションはほぼ意味がないのでは。
回答要約:2025年11月のJPEA資料を確認したところ、2024年3月末0.8%からほぼ横ばいで「現状1%程度」(2025年時点)にとどまっていることが判明。JPEA自身のロードマップも、具体策の中身はセミナー開催・意識調査など啓発活動が中心で、25%達成に必要な行動変容を促す強い規制的・経済的レバーは確認できなかった。加えて2027年度以降、大規模地上設置太陽光がFIT/FIP制度の対象外となる方針も判明し、「FIP比率」という指標自体の意味が今後薄れる可能性も指摘した。【補足】結論として、2030年25%達成は現状トレンドからは楽観的すぎるとの見立てを提示。
Q3. 中国・四国データの追加と東北2040年の突出要因
できれば中国・四国のデータも欲しい。四国は一番インパクトが大きくなりそう。九州を起点にイメージすると分かりやすいが、2040年の東北の数値が飛び抜けて高い。要因は何か。
回答要約:中国・四国の3シナリオ表を追加提示。東北の突出要因については、系統WG資料の前提条件データから、太陽光+960万kW・風力+530万kW(2033年度想定)という他エリアと桁違いの新規接続計画、変動再エネ/最低需要比率が143%→大幅悪化見込みという実需給側の要因を提示し、「モデルの前提が極端」ではなく「東北特有の物理的な供給過剰」が主因と説明した。
Q4. 四国の根拠(JEPX価格)と東北の理解確認
四国について述べた根拠は、JEPX約定価格を見た際に四国が飛び抜けて低い値となっていたため。エリア的に需給が供給過多になっているという判断。そうなると新規接続に対してFIPで抑制抜けされるにしてもインパクトが大きいのでは。東北については洋上風力の影響と理解した。
回答要約:JEPXの直近データ(2025年10月、四国が全日平均最安値)を確認し、変動再エネ/最低需要比率(四国160%、九州に次ぐ水準)と整合することを確認。前回「四国は影響小さい」とした評価を、需給逼迫構造を踏まえて上方修正した。
Q5. 結論の確認(要注意エリアの整理)
結論としては、経産省資料の計画前提が過大であり表通りの数値になる可能性は低い。FIP認定実績を踏まえると、もとの表より抑制は増えなさそう。しかし今後の太陽光・洋上風力の新規接続増大には注意が必要。エリア的には北海道、東北、中国、四国、九州、(北陸)が要注意。東京、中部、関西も油断は禁物。ということでいいか。
回答要約:大枠は妥当としつつ、3点補足。①「抑制が増えない」と「FIP転換の影響が限定的」は別問題であり、容量増加そのものによる制御率上昇は別途進む。②北陸は太陽光より風力(洋上)が主因。③2027年度以降の新規大規模太陽光は非FIT/非FIPとして最初からFIP同様の扱いになるため、リスクは既存の2026年度以前認定のFIT案件に集中する。
Q6. 大規模新規接続の実現可能性への疑問
2027年以降というより、現状の太陽光への逆風の強さは尋常ではない。高圧・特別高圧の大型新規接続が実際に系統連系できるかどうか疑問だが、どうか。
回答要約:2,000kW以上区分の認定量が2020年度2,271MWから2024年度1,023MWまで半減している実績データ、入札の応札割れ傾向、2025年12月の規制強化パッケージ(環境アセス拡大・森林法罰則強化等)を提示し、大規模太陽光の新規接続鈍化を裏付けた。ただし低圧区分・屋根置き・洋上風力は同じ逆風の対象外であることも付記。
Q7. 要注意カテゴリの整理
結局、特別高圧・高圧の太陽光は規制強化で潰された。低圧もFITの新規受付は終了。警戒が必要なのは、①10kW未満住宅用(保護が手厚く件数も膨大)、②事業用屋根置き太陽光、③非FIT低圧、④洋上風力+原発再稼働と思われる。
回答要約:4点とも一次資料で裏付けを確認(住宅用は出力制御の対象外である旨の系統WG資料の記載、非FIT低圧が年3.5〜5GW増加している実績データなど)。「大規模太陽光の新規参入は絞られたが、制御されにくい供給源が形を変えて増え続ける」ことで、既存の大規模地上設置FIT案件に負担が集中する、という構図で全体の結論を統合した。
参考にした一次資料(主なもの)
- 第52回・第53回 系統ワーキンググループ資料(2024年9月18日・12月2日、資源エネルギー庁)
- 「FIP制度に関する政策措置について」資料1(2024年9月30日、資源エネルギー庁)
- 「FIP移行促進に向けたロードマップ&アクションプラン」(2025年9月・11月、太陽光発電協会)
- 「太陽光発電について」資料1(2026年1月、調達価格等算定委員会、資源エネルギー庁)
- 大規模太陽光発電事業に関する対策パッケージ(2025年12月23日、大規模太陽光発電事業に関する関係閣僚会議決定)
- JEPXスポット市場エリアプライス月次データ(2025年10月分)
※本稿の試算部分(第3章・図)はすべて筆者独自の推計であり、経産省・JPEA等の公式見解ではない。投資判断等に用いる場合は必ず一次資料を直接ご確認のうえ、自己責任で行っていただきたい。
コメント
問題はOCCTOが寄り合い所帯で計画も各送配電連中のデータ鵜呑みで行くしかないため
恣意的な運用を誰もチェックできないので
東電の今春先の過剰な出力制御(GW期間中に360万KWもの制御、うち100万KW超を念のためのバッファとして抑制制御・・・。)なども、特に行政罰もなく見過ごされています。
なので、経産省&エネ庁の公表した表はこうしてやる!という決意表明なので、やられるのではないでしょうか?
本当にエネ庁連中は・・・。
構造上そうなりそうな事は理解できますし、発電事業者視点ではどうしても送配電に辛口の感情を持ってしまいがちです。(私もそうです)
私の素直な感想では、各エリアの出力制御はシステム運用(実際に抑制をかける)初年度はかなり多めに制御をかけている印象です。東日本はほとんどチェックしていませんが、西日本はどのエリアも実績を見たり聞いたりする限りそういう感じに見受けられます。2年目から少しずつフィードバックして抑制量が下がっていき一旦底打ちし徐々に上がるイメージ(その間仕様が結構かわりましたけど)
エンジニア的には初期パラメーター辛目運用開始で翌年度調整している。
「各エリアの横の連携や情報交換がされてないんじゃないかしら?」
みたいな温度感での感想はあります。
送配電はあくまで系統に万が一があってはいけないを前提にマージンを取り勝ち
問題は国益を主眼で精査指導できる機関不在なのが問題なのではないでしょうか。
追認するだけなら正直いらいんですもん。