JC-STARのグリッドコード義務化、これってどういうこと?

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2027年から何が変わる?

2027年4月以降、新たに太陽光発電設備や蓄電池などを電力系統へ接続する場合、ネットワーク通信機能を持つPCS(パワーコンディショナ)やEMSなどには、原則としてJC-STAR★1への適合が求められます。

JC-STARは本来、IoT機器向けの任意のセキュリティラベルです。しかし電力分野では、これが事実上の接続条件になります。

この記事では、

  • JC-STARとは何か
  • なぜ導入されるのか
  • 現場で何が問題になっているのか

を分かりやすく整理します。


JC-STARとは?

JC-STARは、IPA(情報処理推進機構)が運営するIoT機器向けのセキュリティラベル制度です。

ルーターやネットワークカメラ、スマート家電など、インターネットにつながる機器が最低限のセキュリティ基準を満たしているかを★1~★4で表示します。

現在のポイントは次の2つです。

  • ★1はメーカーによる自己適合宣言
  • ★2以上は第三者機関による評価(一部機器のみ)

本来は「取得すると分かりやすい」という任意制度でした。

ところが2025年、資源エネルギー庁はこの制度をグリッドコードへ組み込み、2027年から系統接続の条件とする方針を決めました。

つまり、

「任意ラベル」が電力業界では事実上の必須要件になった

ということです。


なぜ導入されるのか

経産省が示している理由は大きく3つあります。

まず、海外では再エネ設備がサイバー攻撃の対象になる事例が実際に発生しています。

国内でも、太陽光発電の遠隔監視装置がサイバー攻撃を受け、不正送金の踏み台に利用された事例がありました。

さらに、50kW未満の小規模設備には明確なセキュリティ基準がありませんでした。

こうした背景から、

「最低限のセキュリティ基準を設けよう」

という考え方自体は理解しやすいものです。


現場では何が問題になっているのか

制度の目的には賛成できても、運用面ではいくつか課題があります。

① 対象範囲が分かりにくい

制度では「IP通信機能を有する機器」が対象とされています。

しかし、

「実際に通信する機器」

なのか、

「通信機能を持つだけの機器」

なのかがはっきりしません。

例えばHuaweiの一部PCSは、系統との通信にはRS-485しか使用しません。

一方で、初期設定用のWi-Fi機能を搭載しています。

RS-485だけなら対象外とされていますが、このWi-Fi機能をどう扱うのかは明確ではありません。

現場では、このようなグレーゾーンが残っています。


② 審査基準が見えない

制度を作ったのは国ですが、

実際に接続可否を判断するのは各地域の送配電会社です。

しかし、

  • どのような基準で審査するのか
  • 全国共通の基準があるのか

については十分に公表されていません。

事業者にとっては、

「自分の設備が通るのか事前に判断できない」

という不安があります。


③ メーカーへの影響

JC-STARは★1であれば自己申告で取得できます。

一方、現在の取得状況を見ると、日本・欧州・韓国・米国メーカーは取得が進む一方、中国メーカーでは取得例が非常に少ない状況です。

結果として、

制度が中国メーカーの参入障壁になっている

との見方もあります。

もし今後、審査基準の不透明さを理由に行政訴訟などへ発展すれば、制度そのものが法的に議論される可能性もあります。


制度の背景には何があるのか

ここからは私の考察です。

JC-STARの導入は、単独で議論された制度ではありません。

2025年に閣議決定された「メガソーラー対策パッケージ」の中で、サイバーセキュリティ対策の一つとして位置付けられています。

このパッケージには、

  • 環境規制
  • FIT・FIP制度の見直し
  • リサイクル義務化

なども含まれています。

つまり、

JC-STARだけを切り離して導入したというより、「メガソーラー対策全体」の一部として採用された制度と見ることもできます。

また、中国製太陽光パネルが市場で大きなシェアを持つ中、経済安全保障の観点も制度設計に影響している可能性があります。

もちろん、これらは公式に示された目的ではなく、制度の経緯から考えられる一つの見方です。


事業者は何を準備すべきか

2027年までに確認しておきたいことは3つあります。

  • 自社設備がJC-STARの対象になるか確認する
  • 将来の機器交換コストを試算する
  • 既設設備の仕様書や交換履歴を保管する

特に既設設備は、交換時の取り扱いが重要になるため、資料を残しておくことが役立つでしょう。


まとめ

JC-STARのグリッドコード化は、再エネ設備のサイバーセキュリティを強化するという点では妥当な取り組みです。

一方で、

  • 対象範囲が曖昧
  • 審査基準が見えにくい
  • 将来の運用が読みづらい

といった課題も残っています。

制度の方向性そのものよりも、事業者が安心して対応できるだけの透明性や予見可能性をどう確保するかが、今後の大きな課題と言えるでしょう。


参考・出典

制度公式情報

メガソーラー対策パッケージ関連

独立系調査報道(経産省・IPAへの一次照会の記録)